転職活動を始めて求人票を眺めていると、応募資格の欄に必須条件と任意条件があり、応募を躊躇する方も多いと思います。
今回は、企業が提示している必須条件と任意条件の考え方について解説します。
結論、必須条件を満たしてなくても応募してOKです
必須条件と任意条件
どの転職サイトでも、求人票には大まかに以下のようなことが書いてあると思います。
- 会社概要
- 業務内容
- 応募条件
- 年収
- 年間休日
- 福利厚生
条件を見て魅力的だと思っても、応募条件の「〇〇の経験3年」などがクリアできず、応募をしていないという方が多いでしょう。
企業の採用を担当している僕が断言しますが、魅力的な仕事だと思ったらガンガン応募してOKです。
必須条件は必須ではない
応募条件の「必須条件」というのは、イメージとしては「理想はこういう人です」というメッセージです。マーケティング用語でいうとペルソナだと思ってください。
いま会社で任せたい仕事は、マーケティング分析の経験が3年くらいあって、一通り施策の評価ができるスキルがある人だと即戦力だと思うから、必須条件で書いておこう!という感じで設定しています。
要するに、それに見合う能力があれば3年働いてなくてもいいんです。3年働いているからといって必要なスキルが身についているかどうかはわかりません。所属していた企業によっても経験できることは違いますし、あくまでも目安として設定しているのです。
例えばですが、経験3年と書かれていて、2年経験があるのに諦めるのは絶対に止めてください。よっぽどのエリート企業でもない限り、普通に書類が通ることの方が多いと思います。
企業側からすれば、本当に必須条件なら書類をもらった後にちゃんと落とします。なので、求人票に書いてあるからといって応募もせず諦めるのは機会損失でしかありません。
マッチングアプリのように「いいね」が消費されていくわけでもないので、ガンガン応募してしまいましょう。
企業はなるべく多くの人と会いたいと思っていることがほとんどです
任意条件は無視でOK
必須条件の他に「任意条件」がいくつか書かれていることがありますが、これは無視でOKです。
企業側の期待値としては、「こういう人だったら会社に合ってると思います」というくらいです。その能力を持っていないからといって落としたりはしません。
もちろん、任意条件に書いてある能力があれば他の人よりは有利です。同じ能力の人がいたら、任意条件を多く満たしている方が採用の優先度は高くなります。
ちなみに僕が勤めている会社では、入社後にOJTで学ぶであろうことに関連する資格や、英語の能力がわかるものを任意条件にしています。どうせ入社後に学ぶので、最初から持っていたらお得ですねという温度感で任意条件として書いています。
企業が条件を設定する理由
そもそも企業が必須条件と任意条件を設定する理由は何でしょうか?
それは、大きく2つの理由があります。ひとつはどちらかというと企業内での確認も含めた求める人材の可視化、もうひとつは求職者向けに大まかな業務内容の周知です。
求める人材を可視化するため
必須条件と任意条件は、採用側も頭を捻って考えて書いています。
- 現状、足りていないリソースは何か
- 将来的に必要になるのはどんな人材か
- どういったスキルを持った人に入ってほしいか
- そもそも、会社にマッチした性格の人はどんな人か
- どういう人となら働きやすいか
こんな感じで、自分たちに今、そしてこれから必要になる人材を十分に検討して整理しています。
そして、重要度に応じて採用の優先度を決めていくわけです。
そこで必要になってくるのが重みづけでして、特に重視している条件を必須条件に、あったら尚よしの条件を任意条件にしています。
つまり、必須条件に完全に当てはまる人は企業側としてはビンゴ!という感じなのです。
「君、いったいどこでこんな人を!?」「ビズ○ーチ♪」のCMみたいな出会いを求めて設定しているのが必須条件なので、実際にそんなに条件にマッチしている人がくるとは思ってないです。
興味を持ってくれた人とできるだけ多く会って、人間性でカバーできるならもちろん採用します。受験の足切りとは違い、面接までこぎつければ逆転のチャンスは大いにあるのが転職です。
応募者に何となく業務を知ってもらうため
必須条件と任意条件を提示するもう一つの理由は、業務で使う知識などを大まかに知っておいてほしいからです。
競合他社にあまり知られたくない情報もあるので、求人情報には実際に使っているシステムの名称や規模感がわかるような話は載せにくいという裏事情があり、こういう経験をしてきた人ならどんな業務か説明した時に理解が早いだろうな、というのを社内ですり合わせて掲載しています。
例えば、〇〇の実務経験が3年もあればアドエビスの使い方とか分析の仕方はわかるだろう、といった想定で条件を設定して、応募してきた人に対して面接で確認するのです。必須条件である程度のフィルタリングをすることで、効率良く欲しい人材にアプローチできます。
とはいえ、そもそも社内のリソースが足りていなかったり、知見がないから求人を募集していることも多いため、必須条件の設定が甘いこともあります。必須条件に満たないから応募を諦めるというのは、実際のところ企業側にも機会損失を生むのです。
採用担当者は、どんな条件で募集すればいい人材が集まるのかを考えているため、多くの人から話を聞いて条件をアップデートしたいと思っています。つまり、必須条件を満たしていなくても応募してもらった方がありがたいです。本当に譲れない条件の時はちゃんとお祈りするので、まずは応募してください!
応募条件を満たしていない場合はどうアピールしたらいい?
必須条件を満たしていなくても積極的に応募してくださいとは言いましたが、もちろん必須条件を満たしていない場合は通過率は下がります。
大事なのは、応募条件を満たしていないけど、代わりにこんな経験や職歴があるのでマッチしていると思いますというアピールです。
採用担当者に「たしかにそんな経験があるなら、一度話を聞いてみようかな」と思わせるようなアピールを考えてみましょう。
募集の背景をしっかりと考えてみる
まず、企業が求人を募集している理由を考えることが重要です。
この募集の背景は、企業の概要説明を読んだり、決算書やIRなどを確認することである程度浮かび上がってきます。
また、応募条件からも読み解けます。例えば今現在はあまり海外展開をしていない企業なのに英語の能力を求めている場合、将来的に海外への事業展開があるかもしれないと予想できます。つまり、英語ができる人を求めてはいるけど、海外企業との実務経験があればそれをアピールしたら好印象かもしれない、という戦略が立てられますね。
このように、いろいろな媒体を使って求人募集の背景を予想し、自分の経験からアピールできるものを検討してみましょう。
企業の調べ方は以下の記事で解説しています。
資格はないが同等の経験があるというアピール
たとえばテック系の会社で必須条件に簿記2級と書かれているとき、求められているのは基本的な経理スキルと、特に工業簿記を知っているかどうかが重要かもしれないと予想がつきます。そこで仮に工業簿記の経験があれば、それをアピールすれば好印象になります。
同様に、マーケティングの実務経験が3年となっている場合などは、求められているスキルはマーケティングの基礎知識と分析、提案力あたりだと推測できます。過去に営業しかやってきていないという場合でも、「知識さえキャッチアップできれば提案力には自信があります」といえば響くかもしれません。
企業側からすれば、どのみち新しく入る人にはキャッチアップの期間が必要であることは理解しています。そのため、知識が未熟なのは多少は甘くみてくれるところが多いでしょう。
応募資格と共通点のある職歴でアピール
例えばGAIQを持っていることが応募資格の場合、Googleアナリティクスを1年くらい触って仕事をしていたことをアピールすれば印象が良くなります。資格を持っているか確認したいのは、一定の知識やスキルがあるかどうかを分かりやすく測りたいという意図があるからです。実際の業務は国家資格など専任業務が発生するものでもない限りは資格の有無は関係ないです。
同じように、TOEICスコアも英語力の目安でしかありません。800点取ってたら一定の知識はあるだろうというだけの話なので、2年間アメリカに駐在していて英語は話せますという人がきたら、スコアを持っていなくても採用します。応募資格を満たしていない場合は、それに代替する経験や職歴をアピールしてみましょう。
NGなアピール
NGなアピール方法は、「応募資格を満たしていない」と自分で書かないことです。
例えば、「簿記2級という応募条件を満たしておりませんが、こういう経験があるから活躍できます」というメッセージになっていればOKです。
上記の断り書きがないと、ただ応募条件を読んでいないだけではないかと思われてしまい、落とされる確率が高くなります。
また、応募資格を完全に無視した応募も辞めておきましょう。例えば以下のような応募条件を仮定します。
【必須条件】以下をすべて満たしていること
- コンサルの実務経験3年以上
- 海外勤務経験2年以上
- toB向けプロダクトのグロース経験2年以上
このように複数の条件が書かれており、なおかつすべて満たしているという断り書きがある場合、1つも満たしていない人が応募しても通過する確率は限りなく0です。さすがに全然望みのないところに応募するのは時間の無駄になるので、応募は避けた方が良いでしょう。
万が一入れたとしても、その後に地獄を見ると思います
まとめ
企業が提示する必須条件はあくまでも企業側の理想像です。少し満たしていないからといって応募を諦めないでください。企業側はできる限り多くの人と会いたいと思っていることがほとんどです。機会損失にならないよう、積極的に応募してみましょう。
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