適応障害に悩んでいる方は、転職活動の際に以下のような不安を抱いているのではないでしょうか?
「転職したいけど、会社に何か言われたらどうしよう……」
「転職しても適応障害が再発したらどうしよう……」
適応障害は職場環境が原因になっていることもあるため、転職によって回復する可能性があります。そのため、転職活動を成功させることで人生が好転することも。
この記事で適応障害に悩む方の助けになれば幸いです。
適応障害とは
世界保健機関(WHO)の診断ガイドラインであるICD-10によると、適応障害は下記のように定義されています。
ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態
ICD-10(世界保健機関の診断ガイドライン)
ストレスのかかっている事象がはっきりしていて、それによって日常生活や対人関係にトラブルが生まれている状態ですね。
ストレスの原因から離れると症状が落ち着くという点でほかの精神疾患とは異なります。しかし、適応障害になった人の半数近くが5年後にはうつ病などの精神疾患に診断名が変更されていることもあるため、適応障害に対して「うつ病よりも症状が軽い」とは思わない方がいいでしょう。
適応障害の時点で治せるように動くのがベストですね
適応障害の症状
適応障害の症状は大きく分けて「情緒面」「行動面」「身体症状」の3つの現れ方があるとされます。
情緒面の症状
感情面で症状が出ます。会社に行こうとすると不安でそわそわしたり、ボーっとしてしまうなどの症状です。
- 抑うつ気分
- 不安感の高まり
- 注意力低下
- やる気がなくなる
- イライラする
- 集中力低下
- 記憶力低下
会社に行きたくないという気持ちは、適応障害の始まりかもしれません
行動面の症状
ストレスの原因に近づくとイライラして暴力的になったり、回避するために自分を傷つけたりします。
- 暴力的になる
- 粗暴な言動が増える
- 喫煙・飲酒量が増える
- 喧嘩・自傷行為などの衝動的な行動
どうしようもなくイライラしてやけ酒してしまうのは適応障害かもしれません
身体症状
会社に行こうとすると動悸がしたり、ひどい場合には過呼吸になってしまうなどの症状が出ます。
- 動悸
- 冷や汗
- 過呼吸
- 不眠
- 吐き気
- 手の震え
誰かに会うと動悸がするのは適応障害かも……
適応障害の原因
適応障害が生じる原因として、外因的ストレスと内因的ストレスがあります。
外因的ストレス
外からの刺激に対しての緊張状態を言います。社会生活上の環境変化、人間関係のもつれなど、多くの人が経験したことのあるストレスです。
- 仕事
- 学校
- 家庭
- 恋愛
- 被災
- 事故
このあたりが外因的ストレスと言われています。
もちろん、人によってストレスの感じ方は様々ですので、同じような経験をしていても適応障害を発症する人としない人がいます。
内因的ストレス
育った環境や性格によってストレス耐性や何をストレスと感じるかが異なるため、各個人によってストレス因が異なることを指します。
外因的ストレスと内因的ストレスのバランスが大きく崩れた状態が適応障害とも言えますね
適応障害は転職で治る可能性が高い
適応障害を発症した原因にもよりますが、発症原因に多い理由として「仕事環境の変化」が挙げられます。昇進してマネジメントをするようになったら業務量が多くなってストレスを感じ、適応障害を発症してしまったり、新卒で研修を終える頃にぐったりと疲れてしまって適応障害になったり。よく言われる五月病は適応障害とも言えます。
適応障害の治療は、ストレスの原因から離れることが重要です。仕事が原因の適応障害であれば、転職をして仕事環境を変えることで適応障害の症状が緩和する可能性があります。
適応障害で転職するときの注意点
適応障害の人が転職するとき、いくつか注意しなくてはいけないことがあります。
転職をすれば回復する可能性があるとはいえ、病気の身です。以下のようなことは意識しておきましょう。
転職活動ができる状態か
まず、そもそも転職活動ができるかどうかを考えましょう。転職活動は新しい世界に飛び立つための一歩ですが、そのぶん身体に負荷がかかります。
履歴書や職務経歴書を作成する余裕があるか、何社も選考を落とされて耐えられるメンタルなのかは主治医とも相談してみた方がいいです。
また、転職活動を始めたからといってすぐに今勤めている会社を辞めてしまうことは避けましょう。「勤め先がある」というのは安心感に繋がります。内定をもらってから辞めるくらいの気持ちで、ある程度長期的な目線で転職活動を進めましょう。
転職先の企業のメンタルヘルスへの取り組み
転職自体が成功しても、新しく勤める会社でメンタルヘルスに取り組んでいない場合は近いうちに再発してしまう危険性があります。転職の軸にメンタルヘルスを入れてもいいでしょう。
ベンチャー企業よりは大企業のほうがメンタルヘルスに取り組んでいると思います
通勤時間が長すぎないか
意外と見落としがちなのが通勤時間です。通勤は慣れてしまっているかもしれませんが、実際はかなりの負荷がかかっています。人が多くてストレスになっているのはもちろん、睡眠時間が減ってしまっていたりして体調不良に繋がっていることもあるため、通勤時間もなるべく短縮できる企業を探してみた方がいいでしょう。
部署異動や出張が多くないか
適応障害の原因となりやすいのが環境の変化です。頻繁な部署異動があったり、出張が多いとその分環境の変化も多いため、体調を崩しやすいでしょう。なるべく同じような仕事を安定して続けていけるような業種・職種に就くといいです。
適応障害の人に向いてる仕事
適応障害に悩んでいる人は、そもそも自分に合った仕事は何なのかを考えてみるのも良いでしょう。
適応障害だからできない仕事があるというのはまた違いますが、少なくとも対人関係や仕事量の多さで疲弊しないような仕事のほうがいいでしょう。
日々の業務がほとんど決まっている仕事
適応障害は環境の変化によって発症することが多いです。そのため、いい意味で環境の変わらない仕事をすると適応障害になるリスクは減らすことが可能です。
また、症状が出てしまっている時もルーティンワーク中心の仕事に切り替えれば少しは楽になることもあります。
一人でできる仕事
他者とのコミュニケーションが適応障害の原因になっていることも多いため、一人でできる仕事をするのもよいでしょう。スキルは必要になりますが、エンジニアやライターなどは基本的に集中して作業して、成果物を提出するスタイルなので非常におすすめです。
もっとも、それでも最低限のコミュニケーションをとる必要はあるため職場選びの際には一緒に働くことになる人と相性が良さそうかどうかは気にしておいたほうがいいでしょう。
在宅勤務ができる仕事
最近はコロナの影響もあり、在宅勤務ができる職場が増えてきました。可能であれば在宅を選択し、落ち着いて仕事のできる環境を確保して業務に取り組んだ方がいいでしょう。
数年前までは在宅での仕事はほとんどの会社でできませんでしたが、現在はそれだけで食べている人もいますし、副業の選択肢もたくさんあります。自分にあったワークスタイルを手に入れるためにも、在宅勤務は視野に入れたほうがいいでしょう。
適応障害の人に向いていない仕事
適応障害の場合、コミュニケーションが中心の仕事やプレッシャーのかかる仕事は避けるようにしましょう。具体的には以下のような職業です。
- ノルマのある営業職
- 上司と部下がいる中間管理職
- コールセンター
不特定多数とコミュニケーションを取らなくてはいけない仕事だと非常に負荷がかかり、適応障害になりやすいです。また、一度治ったからといって上記のような職業についてしまうと再発のリスクも高くなります。
自分に合った仕事を見つけるためにも、上記のような仕事は基本的には避けておいた方がいいでしょう。
転職後に再発させないためにできること
転職活動がうまくいくと、「これで適応障害も治るかもしれない」とポジティブな気持ちになると思いますが、まだ治ったわけではありません。ここでは、転職後に適応障害を再発させないための注意点をご紹介します。
通院・服薬は医師の判断に委ねる
まず、少し体調が良くなったからと言って通院や服薬を自分で止めてしまうのは危険です。必ず医師の判断を聞いて、通院や服薬の頻度を少しずつ減らして調整していくのが再発しにくい進め方です。
通院のリズムが崩れないように職場に配慮してもらうなどして、業務に支障のないように少しずつ治していきましょう。
極端な思考をやめる
適応障害の人はゼロかイチかで物事を考えすぎてしまう傾向があります。ちょっとできなかった、少し怒られたくらいのことでも、自分はダメな奴だと思い込んでしまい、心身に不調をきたします。ちょっとしたミスくらい、ほとんどの人がしていますし、それで極端に落ち込んでしまう必要はありません。気楽に考える癖をつけるようにしましょう。
業務量の管理を徹底する
業務量が多くなりすぎると、自分のリズムが崩れてしまい、結果的に体調を崩すことに繋がります。また、通院や服薬のタイミングも守ることが重要です。業務量が多くなりすぎないように周囲と調整しつつ、無理をしすぎないようにしましょう。
無理をした結果、適応障害になっていることを忘れずに。
規則正しく生活する
意外と見落としがちですが、適応障害は仕事だけが原因とは限りません。もちろん仕事に行くときに体調を崩す方が多いのも事実ですが、それに至る日々の生活で徐々に体調を崩していることもあります。三食食べる、早めに寝る、朝は日の光を浴びるなど、基本的なことを大切にして規則正しく生活してみましょう。
人とたくさん話す
仕事のストレスは誰しも抱えているものです。よく自己啓発本などには「愚痴を言い合うだけの友達とは離れよう」ということが書かれていますが、それはメンタルが強い人がやることです。確かにポジティブな気持ちになるためにはネガティブな発言は控えた方がいいと思いますが、そんなことを気にしている余裕は適応障害の人にはありません。感情や悩みを吐き出せる人と定期的に会うことをおすすめします。
環境変化には気をつける
自分の体調に気を付けることはもちろん、周囲の環境の変化にも敏感になっておくべきでしょう。例えば、仲の良かった同僚が退職してしまったり、上司が昇進して席が離れてしまったり。そのくらい大丈夫と思っていても、実際は影響が大きいこともあります。
適応障害の転職で不安に思うことQ&A
適応障害を抱えている方は、転職が不安に感じることもあるでしょう。
ここでは特に不安に思う人が多い下記の2つの質問に回答します。
- 面接で適応障害について話すべき?
- 転職活動に踏み切れない場合はどうしたらいい?
面接で適応障害について話すべき?
結論、話さなくても問題ありません。自分の病気を申告するかどうかは自己判断でOKです。しかし、それによって会社から何のケアも受けられないことがあるため、実際には適応障害を患っていることを伝えて転職したほうが長期的には安定して働けるのでおすすめです。
また、職場によっては虚偽の申告とみなされて解雇に繋がることも考えられます。
正直に伝えて落とされたら、その会社が合わなかったと思いましょう。
転職活動に踏み切れない場合はどうしたらいい?
転職活動が怖いと感じる場合は、無理をして転職する必要はありません。国や自治体の支援について調べると、一定期間であれば暮らしていけるくらいの支援を受けることも可能です。焦らず、パートの仕事などで身体を慣らしていくのも重要です。
また、就労支援サービスを利用するのも良いでしょう。基本的に仕事に不安を抱えている人が利用するサービスですので、スタッフも適応障害については知見がありますし、親身になってサポートをしてくれます。
まとめ
適応障害はストレスや環境変化によって発症することが多い病気です。まずはゆっくりと休んで心身の体調を整え、余裕が出てきたら転職活動を始めてみましょう。
転職によって働きやすい環境にたどり着くことができれば、適応障害を再発せずに済むこともあります。転職エージェントなどの力を借りつつ、じっくりと時間をかけて準備していきましょう。
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