一般企業を退職する際に退職代行サービスを利用するとスムーズに退職できることはご存じかと思いますが、実は公務員も退職代行サービスを活用して退職することができます。また、条件によっては即日退職も可能です。
この記事では、公務員と民間企業における退職の違い(法律・流れなど)を解説し、公務員の退職代行サービスの利用方法についてもご紹介します。
公務員(教員や自衛隊、警察官)も退職代行を利用できる
基本的に、公務員でも退職代行を利用することができます。
公務員には地方公務員と国家公務員があります。
民間企業とは雇用関連の法律が異なるため、ケースによっては受けてくれない業者もありますが、絶対に使えないということではありません。
弁護士事務所の退職代行サービスだと依頼を受けてくれることが多いです
公務員と民間企業の退職の違いについて
公務員と民間企業では、色々なルールの違いがあります。法律も異なりますし、辞める際の流れも異なります。こういった違いが理由で退職代行を断る業者もいます。
民間のほうが辞めやすいです
法律の違い
民間企業では労働法が適用されますが、公務員には労働法は適用されず、地方公務員法や国家公務員法が適用されます。
国家公務員法附則16条では以下のように定められています。
労働組合法、労働関係調整法、労働基準法、船員法、最低賃金法、じん肺法、労働安全衛生法および船員災害防止活動の促進に関する法律ならびにこれらの法律に基づいて発せられる命令は、第二条の一般職に属する職員には、これを適用しない
つまり、国家公務員は労働関連法の適用対象外となります。
さらに、労働契約法22条1項でも以下のように定められています。
この法律は、国家公務員および地方公務員については、適用しない
つまり、民間企業に勤める人に認められている様々な権利がないのです。
労働三権と公務員
労働三権とは、日本国憲法第28条で規定されている労働者の基本的権利のことで、以下の3つを指します。
- 団結権:労働組合を作る権利
- 団体交渉権:労働者が使用者と賃金や労働時間等の交渉をできる権利
- 団体行動権:ストライキができる権利
公務員は、これらの労働三権についても一定の制約があります。
まず団結権についてですが、これは職員団体制度というものが認められています。しかし、地方公務員法52条5項で警察職員と消防職員の団結は禁止されています。
次に団体交渉権については、交渉する権利を持つものの、団体協約を締結する権利は認められていません。
最後に団体行動権については認められていません。つまり、不満があってもストライキなどはできません。
手続きの違い
公務員は、退職時の手続きにも違いがあります。
民間企業の場合は、民法627条によって以下のように定められています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法627条
つまり、法律上も自分の意志でいつでも辞めることができるのです。一方で、公務員の場合は国家公務員法61条で以下のように定められています。
職員の休職、復職、退職及び免職は任命権者が、この法律及び人事院規則に従い、これを行う。
国家公務員法61条
公務員が退職するためには、任命権者による手続きが必要になります。この手続きなしに辞めてしまうと処分される可能性が非常に高いので注意が必要です。
任命権者とは
任命権者とは、任命・処分等を行う人事行政・管理に直接的な権限と責任を持つ地方公務員上の機関を指します。必ずしも人間を指すものではないことに注意しましょう。
具体的には、以下が該当します。
- 地方公共団体の長
- 議会の議長
- 教育委員会等の各委員会
- 警視総監・道府県警察本部長 など
公務員の無断欠勤におけるリスクについて
公務員は、無断欠勤に対して明確に処分が定められています。特に国家公務員の場合、人事院の懲戒処分の指針で以下のように定められています。
ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。
イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職又は減給とする。ウ 正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。
人事院「懲戒処分の指針」
公務員の退職には辞令交付が必須
公務員が退職する際、辞令の交付が必要になります。
形式的に辞令交付式が行われますが、参加必須ではありません。後日郵送で辞令を送ってもらったり、職場に取りに行けば問題ないです。
退職代行サービスを利用する場合、辞令交付式に参加したくないのであればその旨を退職代行業者に伝えるようにしましょう。
自衛隊は公務員の中でも特殊で辞めにくい
自衛隊は、状況によっては退職を承認しなくていいという定めがあるため、退職を断られてしまうケースがあります。
自衛隊法40条では、以下のように定められています。
第三十一条第一項の規定により隊員の退職について権限を有する者は、隊員が退職することを申し出た場合において、これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときはその退職について政令で定める特別の事由がある場合を除いては、任用期間を定めて任用されている陸士長等、海士長等又は空士長等にあつてはその任用期間内において必要な期間その他の隊員にあつては自衛隊の任務を遂行するため最少限度必要とされる期間その退職を承認しないことができる。
自衛隊法40条
この法律を踏まえると、特別な事由がある場合は退職可能とも取れます。つまり、特別な事由に当てはまるので退職させてほしいと交渉できる退職代行業者に依頼する必要があります。
公務員が即日退職できる条件
これまで述べてきたように、公務員は退職のルールが様々あるため、即日退職できないことも多いです。正確には、その日から行かないという選択肢はありますが、民間企業とは異なり何らかの処分を受ける可能性が高いです。
即日退職が可能になる条件は、下記の2つをクリアしている必要があります。
- 有給がたくさん残っている
- 任命権者からの承認を得ている
それぞれ確認しましょう。
有給がたくさん残っている
まず、実質的な即日退職とするために、退職までに必要な日数分の有給休暇が残っているかをチェックしましょう。残っている場合は、ペナルティなしで実質的な即日退職が可能です。
任命権者からの承認を得ている
上記の有給休暇問題をクリアしており、さらに任命権者からの承認をすでに得ることができている場合は、即日退職が可能になります。
ただし、早期に承認を得られるとは限らないため、実質的にはペナルティなしで即日退職をするのは非常に難しいでしょう。
公務員が辞めるタイミングは年度末にしよう
公務員は民間企業と違い、基本的に年度の途中で退職をすることがほとんどありません。つまり、年度途中で辞めてしまうとそれだけ目立ちます。
具体的には、履歴書が他の公務員とは違うように見えます。特に教員の場合は転職先で必ず理由を聞かれることになるでしょう。もちろん、理由がどうであれ退職自体は可能ですが、転職時にリスクを抱えることになるため、退職時期については慎重に検討することをおすすめします。
公務員が退職代行を使う場合の流れ
即日退職は難しくても、退職代行を利用して退職することは可能です。ここでは、公務員の退職代行の選び方をご紹介します。
公務員の退職に対応している業者を選ぶ
まず大前提として、公務員の退職代行依頼に対応できる業者を選びましょう。
公務員の退職代行は難易度が高かったり交渉が必要になる事が多いため、断られることがあります。
また、公務員対応可としていても自衛隊は不可の場合もありますので、無料相談などで自分の場合は退職代行を引き受けてもらえるのかを確認しましょう。
法律に照らして自分の退職に必要な日数を確認する
民間企業の場合は2週間あれば退職できますが、公務員の場合は規定が異なるため、自分のケースではどのくらいの期間が必要になるかを確認しておきましょう。
自治体、自衛隊法、警察法など、それぞれ自分の職業に関係のある規定を確認してから退職代行サービスを探すことをおすすめします。
退職代行業者に依頼する
- 公務員対応可
- 自分の職業でも代行可と確認済
- 自分で退職についての規定を確認した
上記3つをクリアしたら、退職代行業者に依頼しましょう。
公務員の一般的な退職代行サービス利用の流れは下記です。
- 料金を支払う(前払い)
- 打ち合わせ(希望の退職日等)
- 退職代行開始(勤務先に代行業者から連絡)
- 退職手続き(書類のやり取りなど)
- 退職完了
- 辞令交付・受け取り
上述したとおり、辞令の交付は郵送でもOKですので、職場に行きたくない場合は郵送で受け取りたい旨を業者を通じて連絡しましょう。
公務員の退職代行はどんな業者を選べば良いか
民間企業の退職代行であればどの退職代行業者でも対応していますが、公務員の場合はサービス対象外としている業者も数多くあるので注意が必要です。また、対応可としている業者の中でも押さえておきたいポイントは下記の2つです。
- 自分の職種での退職代行実績があるか
- 高い交渉力を有しているか
それぞれ解説します。
自分の職種での退職代行実績があるか
「公務員の退職代行に対応しています」とホームページで謳っていても、実際には退職の実績がまったくないというケースもあります。公務員退職は業者にとって難易度が高い案件となるため、受けてはいるけど積極的ではないケースが多いのです。そのため、これまでにどのくらいの退職代行実績があるかは依頼前に確認するようにしましょう。
また、同時に確認しておくべきこととして、「自分と同じ職種での退職代行実績があるか」も見ておきましょう。公務員と一括りにしても、教員や警察官、市役所勤務など様々なケースが考えられます。そして、それぞれで退職の難易度も異なります。
自分と同じようなケースでの退職代行実績があるかどうかを無料相談などで確認するようにしましょう。
高い交渉力を有しているか
公務員の退職は難易度が高く、そもそも職場と交渉ができる業者を選ばないと退職代行になりません。自分で退職交渉をする必要が出てきてしまいます。
そのため、職場との交渉行為が認められている労働組合もしくは弁護士事務所が運営する業者を選ぶようにしましょう。
そもそも民間企業は交渉する事ができません。非弁行為に当たります。
公務員におすすめの退職代行業者
なかなか見つからない、公務員の退職代行に対応している業者をご紹介します。是非参考にしてください。
退職代行ニチロー
退職代行ニチローは公務員の退職代行も対応しています。労働組合が運営している退職代行サービスですので、職場との交渉も行えます。
また、様々な労働トラブルに対応してきた実績もあるため、パワパラやセクハラなどにお困りの場合も相談してみるとよいでしょう。
アディーレ法律事務所
アディーレ法律事務所はCMなどでもおなじみの弁護士事務所です。弁護士は職場との交渉が可能なため、公務員の退職にも対応可能です。
退職代行の相談は何度でも無料で受けてもらえますので、自分のケースでどのように退職代行を進めてもらえるのか入念に確認しましょう。
弁護士法人川越みずほ法律会計
弁護士法人川越みずほ法律会計の退職代行サービスは、公務員の退職代行にも対応しています。税別50,000円から依頼可能で、年休消化や慰謝料の請求はオプションメニュー扱いになります。
口コミでは、対応が非常にマメで料金以上の満足感を得られるという評価が多かったです。一般的な弁護サービスは関東圏対応ですが、退職代行は全国対応可能とのことですので、お気軽に相談してみましょう。
まとめ
公務員は民間企業に比べて退職代行を利用するハードルは高いですが、利用できないということではありません。ご自身の状況をしっかりと確認した上で、交渉業務ができる労働組合や弁護士事務所に依頼するようにしましょう。
おすすめの退職代行サービスについては、下記の記事を参考にしてくださいね。
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