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ブラック企業を見抜く求人票の見方を解説

ブラック企業を見抜く求人票の見方

転職活動で探したいのはブラック企業ではなく、ホワイト企業。誰もがそう思っていることでしょう。

でも、実際にブラック企業を見分けるのは結構難しいですよね。実際、僕は前職がとんでもないブラック企業でした。面接の時はそんなこと思わなかったのですが、入社してみたらとんでもない労働環境で文字通り命を削っていたことがあります。その話は別の記事でまとめます。

今回は、何としてでもブラック企業を避けたいと思っているあなたに、ブラック企業に入社してしまった経験のある僕が求人票の見方をご紹介します。

面接でブラック企業を見分けるポイントについては、以下の記事で解説しているので是非読んでみてください。

ホワイト企業を探すための求人票のポイント

早速ですが、求人票で確認すべきはズバリ「給与」「勤務時間」「休日数」「保険」の4つです。それぞれ確認してみましょう。

給与

給与は、基本的に提示された額と手取りは別です。親切な企業はカッコ書きで手取り額の目安を書いてくれていることもありますが、稀です。

手取り額の計算方法

手取り額は、一般には給与額の約8割で計算できると言われています。

例えば年収360万円=月30万円の場合、手取り額はおよそ24万円となります。

正確に計算したい方は給与明細を確認するのが良いですが、一般的には

(基本給+各種手当)−(社会保険料+所得税+住民税)

で正確な値が計算可能です。会社から支給されるお金と控除されるお金について、以下のように表にまとめてみました。

会社から支給されるお金
種類解説
基本給給与の基本のお金
時間外手当いわゆる残業代。会社が定めた所定の労働時間を超えて働いた場合、または法定労働時間を超えて働いた場合に加算される手当。
資格手当会社が定めた資格を保有している人に対して支給される手当。
役職手当管理職などの役職者に対して支給される手当。生活費などの補助を目的に一定額支給されるのが一般的。
家族手当扶養家族がいる社員に対して、生活費などの補助を目的に一定額支給される手当。
住宅手当家賃補助や住宅ローンなどを補助するための手当。
通勤手当通勤にかかる費用を補助するために支給される手当。
控除されるお金の例
種類解説
健康保険料健康保険に加入するためのお金。保険料は収入と加入している保険組合によって異なり、算出された保険料を会社と社員が半分ずつ負担する。
介護保険料介護保険制度の財源として利用されるお金。40歳以上64歳以下の人は、健康保険と合わせて支払わなければならない。保険料は収入と保険者(加入している保険組合)によって異なり、算出された保険料を会社と社員が半分ずつ負担する。
厚生年金保険厚生年金保険に加入するためのお金。公的年金制度には国民年金保険と厚生年金保険の2種類があり、会社員の場合は厚生年金保険に加入するのが一般的。一定期間、保険料を納めることで、原則として65歳になったときに「老齢年金」を受け取れるようになる。保険料は収入によって異なり、算出された保険料を会社と社員が半分ずつ負担する。
雇用保険雇用保険に加入するためのお金。一定期間雇用保険に加入していると、失業時に手当を受け取れるようになる。保険料は収入と勤めている会社の事業内容によって異なる。加入していない会社はやめといたほうがいい。
所得税所得のある人が納める税金。毎月の給与から概算払いをして、年末調整か確定申告で払い過ぎた金額は精算・還付される。所得が多いほど金額は大きくなる
住民税1月1日時点で住んでいる都道府県、市区町村に支払う税金。年間の課税所得に応じて金額が決定される

給与形態によって収入は大きく左右される

収入は給与形態によっても大きく左右されます。

以下に代表的な給与形態をご紹介します。

固定給制

最も一般的な給与形態です。毎月一定額が支給されます。

頑張りによって変化するのではなく、なるべく安定した収入が欲しいという方はこれがおすすめです。

時給、日給、週給、月給、年俸制などは全て固定給制です。

歩合給制

固定給にプラスして、ノルマ達成などでボーナスが支給される形態です。安定した収入を得つつ、頑張りを給与に反映させたい場合にはこの形態がおすすめです。

歩合給制は営業職などでよく見られます。給与を大きく伸ばせる可能性がありますが、固定給が最低賃金ギリギリになっていることがあり、ノルマを達成しない限り生活に困ってしまうというケースもあるので注意が必要です。

完全歩合給制

固定給がなく、全て自分の業績やノルマの達成状況で給与が決まる形態です。

歩合給制よりも大きく稼げるチャンスはありますが、例えば営業で1件も成約が取れなかった場合に無給になるという大きなリスクもあります。

また、このパターンはかなりブラックな仕事環境になることもあるため、注意しましょう。

勤務時間

勤務時間は、ブラック企業を見分ける上で最も重要なポイントです。

どの程度まで勤務時間を許容できるかはそれぞれですが、少なくとも「こんなはずではなかった」とはならないようにしましょう。

平均残業時間の表記に注意

まず注意してほしいのは、「平均残業時間」というワードです。

会社の規模にもよりますが、大きな企業で平均残業時間を1時間程度と言っている場合は面接時に確認した方がいいでしょう。

平均残業時間は、基本的に会社の全部署の平均時間を書いている場合が多いです。つまり、忙しい部署も定時で帰れる部署も全部ひっくるめた平均ということ。

例えば、経理部や店舗事業部は比較的残業時間が短い傾向があります。クライアントとのスケジュール調整などが発生しにくく、業務時間内でタスクを処理しやすいからです。

一方で、マーケティング事業部、営業部などはスケジュールがクライアント合わせになることが多く、自分のタスクは残業時間で行うという人もいます。

以下の表で確認してみましょう。

事業部人数(人)総残業時間(時間)平均残業時間(時間)
経理部50300.6
マーケティング部10303
合計60601

例えばあなたがマーケティング部に入社する時、部署での平均残業時間は3時間ですが、求人票では全社の平均ということで1時間と表示されているわけです。

こういったカラクリをしっかりと理解し、自分の希望部署の残業時間をしっかりと検討するようにしましょう。

残業代が出るか出ないかの見分け方

続いて残業代の話ですが、これは勤務時間の欄に書いてある「みなし残業代」「固定残業代」「裁量労働制」というワードに注目して判断しましょう。

まず、現在の日本の労働基準法では、月45時間・年360時間という時間外労働の上限があります。

これは、2020年4月に大臣告示による基準から法律による原則へと格上げされたものです。より厳しく労働時間はカウントするよということですね。

特別の事情がなければこれを超えることは違法となり、罰則が科されます。

つまり、ポイントになるのは、みなし残業が月45時間と法律ギリギリに仮定されている場合、残業はかなり多くなるということです。

企業側の立場になって考えてみましょう。普段の月間残業時間が平均20時間の場合、わざわざ45時間分の給料を支払うわけがありませんよね。

みなし残業代・固定残業代

そもそもみなし残業代や固定残業代は、人件費の管理を簡略化する目的で導入されていることがほとんどです。先に手当として定額で給与に反映させておけば、設定した残業時間までの給料を計算する手間が省けます。

つまり、裏を返せばみなし残業45時間と書いている場合、それは「月に必ず45時間程度の残業が発生します」ということです。

この設定額を超えると、追加で残業代を計算して支払う必要があります。

ただ、実際は固定残業時間までしかタイムカードに記入できず、それ以降はサービス残業になっていることがほとんどです。これは「就業時間内に仕事を終えられない=評価できない」とされて査定に影響することが多いからです。

業務量のバランスが取れていない会社でこういったサービス残業の常態化は見られます。

裁量労働制

1日○時間働いたとみなし、それを元に給料を定額で支払うものです。残業代が別途支給されるものではないため、契約時には注意が必要です。

例えば、1日8時間の裁量労働制で残業が常態化している場合、実質残業代が支払われていない事になります。逆に、仕事さえしていれば5時間で仕事を終えようが問題はありません。

裁量労働制の場合は、いかに残業をせずに帰るか、自分の業務範囲を超えた仕事は断れるかで勤務時間が変わってきます。個人的には、親切心が強い人には向いていない勤務体系だと思うので、優しい人は辞めておきましょう。

裁量労働制のイメージ図

休日数

休日数については、年間120日以上がおすすめです。

休日数のイメージは、以下の通りです。

休日数休みのイメージ
年間休日120日・125日ほぼカレンダー通りに休みが取れる
年間休日110日土日休み、祝日出勤or一部土曜出勤、祝日休み
年間休日105日土日休み、祝日出勤

ちなみに、1日の労働時間が8時間の場合、年間休日105日は労働基準法の最低ラインです。

現在僕が働いている会社は年間休日が105日ですが、残業がほとんどないのでブラック企業に勤めていた頃よりは楽です。どちらの方が合っているかは自分次第ですが、毎日ルーティン化された業務時間だと生活リズムが整って結果的に余暇を楽しみやすくなると思います。

また、残業が少ないというのは、副業などにも有効ですので、どんな働き方がいいのかは検討しましょう。

ちなみに、平成31年度の厚生労働省の調査では年間休日数の平均は114.7日でした。(平成31年就労条件総合調査

求人票での休日の名称一覧

求人票に書いてある休日の表記は様々です。以下のようにまとめてみました。

求人票の表記名称休み方
毎週完全週休二日制1年間を通し、毎週必ず2日間休める
その他週休二日制1年間を通し、月1回以上、週に2日間休める
その他週休制(週休一日制)1年間を通し、毎週必ず1日休める
その他シフト制 月○○日1ヶ月で必ず○○日休める
その他××勤△△休制××日出勤した後、△△日休める

保険

社会保険に加入しているかどうかは必ずチェックしておきましょう。ほとんどの会社が加入していますが、設立したばかりのスタートアップなどは未加入のケースもあります。

企業の社会保険は、「強制適用事業所」なのか「任意適用事業所」なのかで変わってきます。

事業所の種類概要
強制適用事業所事業主や従業員の意思に関係なく、健康保険・厚生年金保険への加入が法律で義務づけられている会社。対象の会社は一定の事業を行い常時5人以上の従業員を使用する事業所または常時、従業員を使用する国、地方公共団体または法人の事業所と定められている。
任意適用事業所強制適用事業所とならない事業所で、厚生労働大臣の認可を受けて健康保険・厚生年金保険の適用となった事業所のこと。会社で働く人の半数以上が適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けると適用事業所になることができ、働いている人は全員が加入することになる。

社会保険に加入していない会社の場合、年金や健康保険を自腹で支払うことになります。また、失業しても手当がもらえません。

どうしても入りたい理由があるなら覚悟して入ればいいと思いますが、スタートアップはいつ会社が潰れるか分からない危険な橋を渡っているものです。やめておいた方がいいでしょう。

そもそも、法人事業所(株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、社団法人、財団法人など)は社会保険に強制的に加入する必要があります。そのため、入っていない時点でアウトです。

ただし、契約社員やパート、アルバイトは加入を免除されている場合もあるので、採用形態と合わせて確認するようにしましょう。

社会保険の加入条件は、以下のようになっています。

保険の種類加入の有無備考
雇用保険原則、全従業員が加入「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込みがある」人を雇用した企業は全て加入させる義務あり。
労災保険全従業員が加入
健康保険条件付き常時雇用される従業員は、全員加入。非正規型雇用の契約社員、パート、アルバイト等も勤務時間・雇用される期間等の条件を満たせば加入。
厚生年金条件付き常時雇用される従業員は、全員加入。非正規型雇用の契約社員、パート、アルバイト等も勤務時間・雇用される期間等の条件を満たせば加入。

ブラック企業の求人票あるある

ブラック企業の求人票には、様々な特徴があります。これを知っておくと、ブラック企業に引っかからずに済む確率が上がります。

業務内容が不明瞭

まず、業務内容が不明瞭です。ブラック企業はとにかく人手が足りていないため、これだけをやってほしいという明確な業務の決まった募集はしません。

「マーケティング部に所属し、データの分析からクライアントへの提案まで一気通貫で担当してもらいます。最初は教えてもらいながら取り組んでいきますので安心してください。」という感じで、ふわっとしています。

業務内容が不明瞭ということは、何を頼まれても文句を言いにくいということでもあります。特に、特定分野のスキルアップを考えて転職をしたいと思っている人は、余計なことに時間を取られて体力を消耗するだけの日々になってしまうので、避けた方がいいでしょう。

やりがいをアピールしがち

高い給料が出せない、残業も多いという場合にアピールされるのが「やりがい」です。

やりがいは仕事選びにおいて重要なポイントです。しかし、仕事に見合った給料が出て、残業もなくプライベートも充実させた上で仕事にやりがいを感じることは十分可能です。

そもそも、やりがいのある仕事ですと企業側から言ってるのは気持ち悪いですよね。やりがいは自分で感じるものですから、その時点でズレてるなと思った方が良いです。

みなし残業という名の奴隷契約

勤務時間の説明でも紹介しましたが、みなし残業はブラック企業に多いので注意しましょう。

僕の場合、みなし残業45時間で、それ以外に約100時間ほどの残業が発生していました。もちろんサービス残業です

普通に考えれば労働基準法違反で処分されるべきですが、ある種の宗教じみた会社だったので誰も反抗せず、サービス残業が常態化していました。まあ、そのうち問題になるでしょう。

求人票で確認するのはもちろん、その後の面接でも、内定後の契約書類でも確認しておきましょう。

平均残業時間が当てにならない

残業しない部署も合わせて平均を出したり、このくらいの残業時間にしておけば応募は来るだろう、といった感じで、実態とかけ離れた数値になっていることが多いです。

求人票の他の部分を確認しつつ、ブラック企業っぽいなと感じたら平均残業時間は信じない方が良いです。転職サイトが実際の残業時間を確認することはできませんので、実際の口コミなどから判断しましょう。

どんな口コミサイトを見ると良いかは、以下の記事で確認してみてください。

給与幅が大きい

ブラック企業の特徴として、給与幅が大きく書かれていることが多いです。

これは単純に、上限を高くしておけば人が集まりやすいということもありますし、メンバークラスから部長クラスまで含めてのレンジの可能性もあります。

そもそもですが、求人票に書いてある年収額は目安でしかありません。下限の金額よりもさらに低い金額でオファーされることもありますので、注意してください。

なかなか内定がもらえずにいると、焦って年収額を下げて承諾しがちです。自分が納得するならそれでもいいですが、個人的には、バイトでもしながら納得のいく転職にしてもらいたいです。

ずっと求人が出ている

いつ見ても求人票が公開されている企業はブラック企業の可能性が高いです。

離職率が高く、常に人手不足に陥っているため、ずっと求人を出していることが考えられます。

まれに超成長企業で人手が足りていないということもあり得ますが、その場合は会社情報などを確認して業績を見てみましょう。業績が非公開の場合、面接で必ず聞くことをおすすめします。離職率と一緒に聞いておくと良いです。

まとめ

ブラック企業でもいいから成長したい!と考えている方はいらっしゃると思います。

しかし、ブラック企業に入ったからといって成長できるとは限りません

もしあなたが一人じゃ何もできない指示待ち人間なのであれば、ブラック企業に食らいついてやっていけば多少は成長できるでしょう。ですが、自分で行動でき、誰に言われなくてもスキルを伸ばすために勉強して仕事に生かしていける人は、ブラック企業に行かなくても絶対に成長できます。むしろ、自分の時間を確保することが成長への近道になります。

自分のタイプをしっかり分析した上で、なるべく良い環境で仕事ができるような転職を目指しましょう。

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